胃カメラと大腸内視鏡が必要な時 & どんな麻酔を使うの?

アメリカでもし...

アメリカでもし胃カメラや大腸内視鏡を勧められたら...「どんな時に必要なのか」と「使われる麻酔」について少し説明しようと思います。

たまたま縁があって消化器系のスペシャルティーで働き始め、いつの間にか15年経ちます。10年以上看護師として毎日胃カメラと大腸内視鏡に立ち会ってきたけれど、NPになって驚いたことが1つ。

それは患者さんの質問の量が多いこと

今思ってみれば、患者さんが病院に来る時にはもう(当たり前だけれど)心の準備はできていて、ウェブサイトでいろいろ読んだ後。友達とか家族にも「どうだった?」とか聞いて、経験話も聞いた後。

なのでNPになって、クリニックで「胃カメラしましょうね」とか「大腸内視鏡した方がいいですね」とアドバイスした時の質問の多さにびっくりしました。

もちろん「あ、まだちょっとそれは...」という方もいます。こちら側から「やりましょう」というのは簡単ですが、患者さん側からしたら心の準備が必要ですよね。

これも病院勤務だった時は、入院している患者さんにチョイスが無かったというか(ノーと言っても良いのですが)そんな感じだったので、改めて「患者さんの立場になって考えなければ」と実感しました。

そりゃあそうですよね。不安ですよね。だってカメラを体の中に入れられるなんて未知の世界の出来事。麻酔だって怖いですよね。なので少しでも多くの方の不安を和らげることができたらと思います。

ちょっと余談ですが、胃カメラも大腸内視鏡も日本のオリンパスの内視鏡が使われている所がほとんど。中国製のを使っている病院もありましたが、映像の質が違いますね。先生方も使い心地が全然違うと言っていました。さすが日本のオリンパス!

胃カメラが必要な時

胃カメラは食道、胃、十二指腸を観察するための検査です。この検査が必要な主な症状としては胸焼け、喉がつかえる感じ、黒いタール便、上腹部の痛み、吐き気、原因の分からない体重減少などがあげられます。

検査時間は通常5~10分程度です。

大腸内視鏡検査が必要な時

大腸内視鏡検査は大腸がんのスクリーニングのために通常50歳から勧められている検査です。ですが、近年アメリカでは若い方の大腸がんのケースが増えてきているため、40歳や45歳から勧めている医療機関もあります。

スクリーニング以外で大腸内視鏡検査を勧める主な原因としては便秘、下痢、腹痛、血便、原因の分からない体重減少などがあげられます。

検査時間は通常20分~30分程度。長いスコープで、直腸から結腸、回盲弁の大腸全域を観察することができます。

麻酔について

今の時代、良くも悪くもウェブサイトからたくさんの情報が得られるのですが、内視鏡について一番情報が得にくいのは「麻酔について」のようです。

一般的に胃カメラと大腸内視鏡に(アメリカで)使われるのは2種類:Conscious Sedation とDeep Sedation(Monitored Anesthesia Care とか MACと呼ばれることも)です。どちらにしても静脈内にお薬を投与することになります。

そしてどちらが使われるのかは患者さんの健康状態と保険の種類によって決められます。

Conscious Sedation

これは一般的にTwilight Sleepと呼ばれているもので、「大腸内視鏡の時起きててモニターを見てた!」とか「ドクターと話しながらだった!」というのはこの場合です。

そして「起きてて苦しかった」とか「痛かった」というのもこちらの場合です。

薬は主に Fentanyl と Versed というのが使われます。これは看護師がドクターの支持のもと、投与します。鎮静剤と鎮痛剤で「痛みの無い内視鏡」がゴールですが、難しかったりもします。

比較的若くて健康な人が Conscious Sedation になりますが、体重の重い人や普段お酒をたくさん飲む人は効きにくいのでなかなか眠ってくれません。途中で起きちゃったりもしやすいです。

日本人(アジア人)は他の人種と比べてかなり少ない量で眠ってくれます。ただ内視鏡後、起きるのにも時間がかかります。

あとは保険がカバーしないケースも Conscious Sedation になります。ここで厄介なのが高い保険が必ずしもカバーするとは限らないということ。

麻酔医の友達曰く、カリフォルニアだとブルークロス PPO とかはだめらしいです。でもアリゾナなら大丈夫だそうなのでアメリカの保険は本当にややこしい...

そして Surgery Center とか Endoscopy Center の方が(病院ではなく)Deep Sedationを使う場合が多いような気がします。

気になる内視鏡をしている時の痛みなんですが、これは(個人的な意見としては)ドクターの腕がかなり影響していると思います。上手なドクターだと不思議と患者さんは起きてても痛みがゼロなので。

Deep Sedation(MAC)

そして「え~、起きてるなんて嫌だ~」という方!「痛いなんで絶対に嫌だ」という方!アメリカではほとんどが Deep Sedation(MAC)です。MACは全身麻酔とは違って自分で呼吸をします。

麻酔医または麻酔看護師がお薬を静脈投与するのですが、プロポフォールというお薬がメインに使われます。そしてこのプロポフォールなんですが、白い液体で静脈に投与すると患者さんはほんの何秒かで眠ってしまいます。そして眠りが深いので痛みを感じることはありません。

なので患者さんにとって楽なのはもちろん、ドクターにとっても患者さんが暴れたりしないのでやりやすい。そして「正しく」使えば比較的安全です。「正しく」というのは麻酔のトレーニングを受けたプロバイダーが使うということ。そして心電図やバイタルサインのモニターと非常時に対応できる状態が整っているということ!

そうしないと...

実はこのプロポフォールはマイケルジャクソンが家で使っていたお薬なんです。眠れなかった彼に心臓内科(専門が間違っている!)の医師がで(緊急時に対応できない!)あげてたやつです。いやぁ~、家で使ったらかなり危ないです。だから亡くなってしまったわけですが。

でもマイケルジャクソンが自宅で使いたくなったのが納得できるくらいみんなぐっすり気持ちよく眠ります。そして何も覚えていないので、内視鏡が終わった後に「いつ始めるの?」って聞く人も多いくらい。

「もう終わりましたよ~」と言うとびっくりされます。信じてもらえない時は(笑)内視鏡中に撮った写真を見せて説明します。そして皆さん「あ~、プロポフォール家でも使いたいわ~」と言って帰って行きます。

プロポフォールは投与を止めると、ほとんどの人は結構すぐに目が覚め始め、回復も早めです。

患者さんにプロポフォールだと言うと「え~マイケルジャクソンはそれ使って死んじゃったけど大丈夫なの?」と聞かれることもありますが、先ほども説明したように医療機関ではちゃんと麻酔専門のプロバイダーにモニターされているし、万が一何か起きてもすぐに対処できるようになっています。

10年以上内視鏡を見てきましたが、外来の患者さんでプロポフォールのせいで亡くなった方、またはそのせいで入院となった方はいませんでした。(稀にアレルギーなどもあるので絶対にあり得ないとは言えませんが)

MAC がカバーされない保険を持っている人は、ドクターと相談するか(いろいろ方法はあるので)「現金で払うから」と MAC にしてもらう患者さんもいますが、これは麻酔医/麻酔看護師との相談となります。

以上、どんな時に胃カメラと大腸内視鏡検査が必要になるのかと、麻酔について簡単な説明をさせて頂きました。このサイトは情報提供のみを目的としています。診断、治療または医学的なアドバイスが必要な方は医師やその他の医療専門家にご相談ください。

コメント

タイトルとURLをコピーしました